副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
「副社長、北里さんきっと裏の顔がありますよ。あの人、なんか怪しいですから」
宇宙はフッと笑った。
「話しはそれだけか? 」
「え? まぁ、そうですが。信じてくれますか? 私が、わざとやったんじゃない事」
「さぁな。俺はただの傍観者にすぎない。それが事実なら、本人にちゃんと話すべきじゃないのか? 」
そう言われると、有香は何も言えなくなった。
宇宙はそのまま去って行った。
「やっぱり邪魔だわ、あの女。今度は、確実に消してあげるから」
憎悪に満ちた目をして、有香は含み笑いを浮かべた。
それから数日間の間は、何事もなく有香も大人しかった。
平和な日々が過ぎ。
週末が来た。
休みの前はバタバタと忙しく、時間があっと言う間にすぎるくらいだ。
週末はノー残業ディになる為、社内全員が定時で帰る。
涼花はあれから宇宙から連絡があり、仕事が終わったらあのレジデンスに来てほしいと言われていた。
オフィスビルから10分もかからない場所にあるレジデンス。
終わってすぐに行くと、帰り際の社員に見られてしまう可能性があるため、涼花は時間をずらしてもらっていた。
約束の時間は19時。
それまで駅前にでも行って、時間をつぶそうと思い涼花は歩いていた。
大通りの交差点で、信号待ちをしている涼花。
大通りには車が行き交っている。
スピードを出して一台の車が走ってきた。
ドン!
勢いよく涼花の背中を誰かが押した!
驚く暇もなく、その勢いて涼花はお踊りへと突き出されてしまった!
キーッ!
車の急ブレーキの音が響き、ドン! と当たる音がした。
「キャーッ! 」
周りの人の悲鳴が聞こえた。