副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
階段の踊り場では、血まみれで倒れている女性がいる。
その女性は…
写真に写っている宇宙の隣にいた女性。
(た…助けて…)
助けを求める声がだんだんと小さくなってゆく…。
どのくらい時間が過ぎたのだろう。
ガチャッとドアの開く音がした。
階段を勢いよく登って来る音が聞こえてきた。
(風香! )
白衣を着た医師らしき男性が、踊り場で倒れている女性を発見して駆け寄って来た。
(やはりここだったんですね)
後から駆けつけてきたのは郷。
今より少しだけ若い郷は、メガネをまだかけていない。
(屋崎さんが無理やり風香さんを連れて行って、階段の方へ行くのが見えたので。ここではないかと思いました)
(まだ息はある。早く運ぼう)
白衣の男性は女性こと風香を抱きかかえ、階段を降りて行った…。
病院へ運ばれた風香。
ベッドの上で眠っている風香は、とても青白い顔をしている。
(大丈夫ですか? 風香さん)
(命に別状はない。だが、怪我をして一度呼吸が止まていたようだ)
(そうですか…。きっと犯人は屋崎さんですよ。…僕の彼女も、同じことをされていますから)
(そうだと思うが、証拠がない。少し様子を見よう…)
眠っている風香の傍にいる医師の名札には「東条」と書かれている。
「…ご、ごめんなさい。治まりました」
涼花の声で、ハッと目を開けた宇宙。
「大丈夫ですから…」
そう言うものの、涼花は真っ青な顔をしていた。
「ねぇ…。教えてほしいのだが」
「なんでしょうか? 」
「あんた、怪我した事あるのか? 頭を」
尋ねられた涼花は「いいえ」と否定しようとした。
だが、宇宙の真剣な眼差しを見ると言葉が喉に張り付いてでてこなかった…。
「今、あんたの頭に触れたら。階段から落ちる場面が見えた。それに、あんたの頭に触れると激痛が伝わってきた」
そんな事が見えるの?
ちょっとびっくりして、涼花は宇宙を見た
「当たっているか? 」
涼花はそっと視線を落とした。
「…やっぱりまだ繋がっているんだな…」
写真たてを手に取った宇宙は、フっと小さく笑った。