副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
ソファーに座らされた涼花は、さっきよりは落ち着いた表情をしていた。
宇宙は冷蔵庫から、ペットボトルのお茶を持って来て涼花に渡した。
「ちょっとこれ飲んで、一息ついて」
素直に受け取った涼花は、ゆっくりとお茶を飲んだ。
「俺の話し聞いてくれるか? 」
涼花はゆっくりと頷いた。
宇宙は涼花の隣に座り、そっと手を重ねた。
重ねた涼花の手はちょっと冷えていた。
そう言えば、感情的になるといつも手が冷えていたなぁ…。
宇宙は重ねた手をギュッと握りしめた。
「先ず。離婚用紙は、俺が送ったものではない。俺には、既に俺とアンタが記入している離婚用紙が送りつけられてきた。書き留めで本人限定で送られてきて、それを見て信じられなくて暫くそのままにしておいたが。これは絶対に誰かが仕組んだ事だと確信できたから、その離婚用紙は破り捨てた」
「…でも…再婚したと…聞きました…」
「誰が言った来たんだ? そんな事」
「屋崎さんが…年賀はがきで知らせてきました。…貴方と、2人で写した結婚式の写真が印刷されていました」
「なるほど…。それで、俺の下に送り返されて来たのか。必要ないからと」
そっと、涼花を引き寄せて宇宙はギュッと抱きしめた。
「ごめんな。…俺がすぐにでも、捜索願いを出せばよかったんだ。でも、警察に届けておおげさにしたら、よけい帰ってこられなくなるんじゃないかって。そう思ったから…」
そっと涼花の頭に触れた宇宙。
(分かりません…何も思い出せません…)
(大丈夫。何も心配しなくていい、これからは僕が君を護るから。今日から、君は北里涼花。何も思い出さなくていい、今から新しく生きてゆけばいいんだ)
優しい男性の声。
その声は医師である東条の声だった。
「ねぇ…」
宇宙は涼花の額に額をくっつけた。
「ここから、新しくやり直してくれないか? 」
「え? 」
「何も分からなくていい。今でも俺の妻は…あんただから…。もう、セフレじゃないから…」
驚いた目をしている涼花に、宇宙はそっとキスをした。