副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
秀臣は久しぶりに涼花が帰ってきて、とても喜んでいた。
「久しぶりにゆっくりしてゆくといいよ、色々大変だったからね」
広いリビングでお茶を飲みながら秀臣が言った。
涼花は何も言わず俯いていた。
「思えば、姉さんが北条家に嫁ぐ時も。大変だったのを覚えているよ、北条家は医師家系だから敷居も高いけどプライドも高いから。姉さんが嫁いで窮屈になるんじゃないかって、みんな心配していたからね」
「私が結婚するときは、10憶も貰ったって聞いたけど」
「ああ、それね。僕も聞いているよ。彼は、よっぽど君の事を愛しているんだって思ったよ。10憶じゃ足りなかったら、いくらでも出しますからお嬢様と結婚させて下さいって、言って来たそうだよ」
「…寝ている間に連れてゆくなんて…そんなことしなくたって…」
「風紀さんも姉さんも、君に幸せになってほしかったんだよ。こんなに、娘を愛してくれる人なら安心できるって思ったんだよ」
複雑そうな顔をして、涼花は俯いていしまった。
「もう過去はいいじゃないか、これからの未来を見て行けばいい事だよ」
「私…名前を元に戻そうと思います…」
ん? と、秀臣は涼花を見た。
「もう逃げなくていいなら。本当の顔に戻った事だから、名前も戻します…」
「それがいいね。あんなに愛してくれる彼がいるんだから、何も心配いらないよ」
「はい…」
小さく返事をした涼花は、そっとお腹に手をあてた…。
「あきらめていた事が、手に入ったのも…あの人が愛してくれたおかげ、そう思っています」
「良かったね。最近、記憶もハッキリしてきたようだし。もう心配することはないと思うよ」
「…そう思っています。…忘れてしまう事が怖かったけど、それもなくなってきました」
「そっか。それなら安心だね」