副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
(どうやら図星ね。私、どこでも見ているの。貴女を訴えてもいいのよ。夫をたぶらかした女として)
「はぁ…」
(その前に、ちょっと話をしたいの。今夜20時に、オフィスビルに来てくれる? )
「20時ですか? 」
(そう。そのくらいなら、人もいなくなっているから話しやすいわ。来なかったら、貴女が夫と不貞行為をしている写真を社内にばらまくわ)
「そんな事をしたら、副社長の立場が悪くなるじゃないですか」
(別に。夫は貴女に、着きまとわれただけだもの。被害者だから、責められるのは貴女だけよ。いい? 辞めさせられたくなければ、必ず来なさい。いいわね! )
電話は一方的に切られた。
すぐ直後に、メールが届き写真が添付されていた。
その写真は、涼花と宇宙が一緒にランチを食べている写真だった。
遠目から写されているが、はっきりと撮られている。
「まるでストーカー…。こんなに監視しているの? 」
半分呆れた涼花だったが、とりあえず話を聞こうと約束の20時にオフィスビルに行くことにした。
ちょっと時間をつぶしてから、約束の時間にオフィスビルに来た涼花。
涼花が到着すると、携帯が鳴った。
「はい…」
(北里さん? ちゃんと来たわね)
「来ましたけど、どうすればいいのですか? 」
(階段を使ってちょうだい。オフィスフロアまで来て、そこから階段を使って登ってきて。階段の踊り場にいるから。その方が、誰にも聞かれないでしょう? )
「分かりました…」
言われた通り涼花はオフィスフロアまでエレベーターで登って、階段を使い上まで上がって行った。
涼花が階段を上ってゆくと。
ガタッ! と、大きな物音がした。
そして、ガタガタと何かが落ちてくる音がした。
ドサッ!
階段の踊り場で誰かが倒れる音がした。
その音を聞くと、涼花の頭が酷く痛みを感じた。
激しい痛みを押さえながら、涼花は階段を上って行った。