エチュード〜さよなら、青い鳥〜
ーー違うよ。驚いただけだ。
君の思っているような悲しみや絶望は、違うよ。

いいのか?
手を伸ばしていいのか?
君と一緒に生きていくという未来を、掴んでもいいのか?


「この家に産まれたからには、“丹下”の名前が呪いのようにつきまとう。周りの声に苦しみながら、何とか乗り越えなきゃならない。
家族じゃダメ。何を言っても届かないし、救えない。
だけどいつか、人生が変わると思えるような出会いがある。俺には、わかる。初音の悩みや苦しみは俺も通ってきた道だから」

「社長には、人生が変わるような出会いが?」

「うん。高校生の頃、俺は親の金で遊んでばっかりのどうしようもないクズだった。そんな俺が、一人の先生に出会ったんだ。クズな俺に寄り添ってくれて、励ましたり、怒ったり、“丹下の息子”じゃなく、“丹下広宗”って1人の人間を見てくれた。彼女の為に、強くなろうって思った。
そして彼女を手に入れる為に最高の男になろうって、死にものぐるいで努力したんだ。今の俺があるのは、彼女のおかげなんだ」


広宗が、隣に座ってほんのり頬を染める妻を見た。どうやら広宗は、その学校の先生を手に入れたようだ。
< 128 / 324 >

この作品をシェア

pagetop