エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「初めて出会ったミュージックバーで、君のショパンの『革命』を聴いてからずっと、君のことが頭から離れたことなんてない。
言葉にすれば、『好き』とか、『愛してる』と一言で終わってしまう。だけど、そんなものじゃない。
今も変わらず…いや、もう、大きくなりすぎて俺の全てと化しているくらいの感情になっている。
初音。俺を信じられないなら、ビジネスパートナーとしてそばに置いて。この感情は外には出さないから。ひたすらビジネスに徹してみせる。信頼を取り戻せるように、努力するから。
だから、俺をそばにいさせて」


涼はわずかに顔を歪めている。泣き出しそうだと、ふと思った。
いや、泣き出しそうなのは、自分かもしれない。


だって、初めてかも、知れない。
これほどに、涼からはっきりと自分の感情を告げられたことは。

そのことが、胸を詰まらせるほど苦しい。

頬を生暖かいものが伝った。


「マーマ?いちゃい?」


ほろっとこぼれた涙が、涼音のおでこに落ちた。
涼音は涙を流した初音を心配して、自分も泣き出しそうに顔を歪め始めた。
そんな表情が、今の涼に似ている。


「痛くない、大丈夫だよ、涼音」


優しく涼音のおでこにキスをして、初音はギュッと抱きしめてやる。

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