異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
「謝らなきゃ、って……。どういう事でしょう?」

「そうですね……、まず最初から説明しなくてはいけませんね……」

 彼女はそう言うと、あたしのほおに手を優しくあてて。

 ってなにこのシチュエーション?

 顔がだんだん近くなる!

 あうあう。

 まるでキスでもされるのかと思うようなシチュエーション。彼女はあたしの瞳の奥をじっと覗き込んで。そして、言った。

「ふふ。そう怯えないで。なにもしないから」

 そうふんわりと笑う。

 はうー。

 ドキドキドキドキ!

 胸の鼓動がすっごく早鐘を打ってる!

 あうあう静まれあたし!

(はうー。レティーナさま……)

 あうあうマリアンヌまで!

「やっぱり。まだ貴女の中には(レイス)を同じくする存在が重なっていますね……」

 と、そうレティーナさま。

 はい?

 さすが大聖女様と言うべきか。瞳の奥を見るだけで、あたしのこと見透かしたっていうこと?

 っていうかキスされるかと思ってドキドキしちゃったあたし、ばかみたい?

 はふう。と、胸の中の空気を吐き出したあたし、ちょこっと落ち着いて彼女に向き直った。

「わかるのですか?」

「猫の意識が貴女と融合しているのもわかりますよ」

 え?

「貴女がマリアンヌ様とは違うことも」

 はうー……。そこまで……。

「教えて頂けません? 貴女のこと……」



 あたしはそこで数秒固まった。

 どうしよう?

 でも、レティーナさまは信用できるよね?

(そうですわね……、全てお話しして協力していただくのがいいかもしれませんね)

 だよね?



 優しくふんわりとあたしの瞳を覗き込む大聖女レティーナさま。

 敵わないな。この人には嘘がつけないなって、そんなふうにも感じてる。

 あたしは、

「今、ここにこうしているわたくしは、ううん、あたしは、確かにマリアンヌではありません。あたしの名前は茉莉花。たぶんこことは別の世界から来ました」

 そう、覚悟を決めてそう話し始めた。




「あ、もちろんマリアンヌはレイスの中にちゃんといますよ? 表に出てこられなくてちょっと困ってるんですけど」

 にこにことあたしの言葉を聞いているレティーナさま。

 あたしのほおに当てた手はまだそのままだ。近いよ? お顔。

「そうじゃないかって、そう思っていましたわ。わたくしがあの時施した処置は、貴女たちのレイヤーを解除するところまでだけでしたからね」

 え?

「貴女たちのレイスは次元の膜、レイヤーという状態で重なりあっていたのです。猫の姿の時にはそのうちの猫のレイヤーを一番表面にした状態で合成、融合していたのですわ」

 中腰であたしの瞳を覗き込んでいたレティーナさま。そのまま右手をほおからあたしの頭に移動させ。

「わたくしはそのレイヤーを解除しただけ。貴女たちの問題を根本的に解決したわけでは無かったのですから……」

 そう、あたしの頭を優しく撫でてくれて。

 アンニュイな、そんな表情を見せた。


 
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