異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます

嵐の夜に。

 明日が休息日で今日は塔に行くのはお休みだったから朝から結構ゆっくりしてた。

 そういえば、なんだけど。

 この国には外国っていう概念が無い。

 最初はあたしが聞かないだけかとか思ってたけどそうでもなくて、本当に国と言ったらこの国しかないの。

 だからかな?

 この自分たちの国をあらわす言葉も特にない。

 まあね? 区別する必要がないんだもの。そうかもね?

 現在の王室はオルレアン家。

 その昔最初に魔道王国が興った時の王家はレイズ王家。

 そういう意味で言ったら王室はけっこう変わってるし血統だって必ずしもずっと繋がってるわけでもない?

 まあ、でも、貴族であればどこの家系でも多かれ少なかれ血が繋がってるからそういう意味では王が変わっているだけで国としては同じような状態が続いているって言っていいかな?

 世界に在るのは、中央、辺境、そして魔界。

 魔界とは今は行き来するものも居ないからあちらがどうなっているのかまでは知られていないのだけど、昔は魔王が居たって話し。

 辺境は……。

 あまり訪れるものも居ない場所。

 滲み出た魔によって魔獣の巣窟になっている場所も、一面の砂漠で生物がほとんどいない場所も、そして、氷の壁が連なった極寒の世界も。
 この世の地獄のような場所まで様々な環境の場所が揃っている。

 そういうところに果敢に旅をする冒険者みたいな人が居ないわけじゃないのだけど、なかなかね。

 生きて戻ってくる人も少ないらしいから。



 どうしてかな?

 ギア達が頑張ればそういうところも緑の楽園にすることができるんじゃないかって思うんだけどな。

 そうも思ったけど。

 でも。


 これは、人の弱さ、かな。

 大勢の人がいればそれでなくとも争いがおこる。

 もしかしたら機械神《かみさま》は、複数の国ができるのを望まなかったのかな?

 国が争えばまた取り返しのつかない戦争がおきる。

 再びこの地が人の住めない場所になるのを望まなかったのかな。そうも思う。

 人の住める場所を限定することでこの地球に沢山の国ができる事を防いでいるのかも?

 小さな国の中で争っている分にはまだそこまでの悲劇はおきにくい。そこまで機械神《かみさま》は考えてるのかもとか。


 こんな、人が自由に繁栄するのを妨げているような考えはずいぶん傲慢だな。とも思うけど。

 まるで箱庭? 

 そんな風にも思うけど。

 でも。

 何が正解なのか、あたしにはわからないのだけれど、それでも。

 今のこの世界で精一杯皆が安心して生きていけるのであれば。

 今のこの世界で皆が夢をみて頑張っていけるのであれば。

 これは茉莉花としての知識、意見だけど、この世界にも格差や差別、そういった諸々はあるけれど。

 それでもみんなが幸せに生きていけるのであれば嬉しいな。

 そんな幸せな世界でいられるよう、あたし、尽力したい。

 そんな風に思うのだ。

 できれば、アーサーと一緒に。

 そんな世界にしていけたらな。そう、思うんだ。




 風が強くなってきた。

 窓の外は木々がざわざわと枝葉を軋ませて。

 空の黒さに、あたしは不安な予感がしてしょうがなかった。
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