異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 辿り着いたのは都会の喧騒の真っ只中。

 スクランブル交差点のど真ん中に現れたあたしたち。はうあう、ちょっと流石にこんなところに出るとかもうちょっと人のいないとこに出て欲しかったよ事故とかあったらどうすんの!

 そう一通りアウラに心で文句を言って。

 大勢の人人人。あまりにも大勢の人間があたしたちを一瞬見て、それでもそのまま通り過ぎていく。

 季節は……、秋?

 街路樹のかえでが色づいて秋の彩を魅せている。所々にカボチャのオブジェや飾りがあるのはハロウィンだろうか?

 そっか。あたしは戻ってきたんだ、日本に。なんだか空気までが懐かしい。

 あたしたちの装いは目立つ筈なのに、流石に注目されなさすぎじゃない? そうも思ったけど、納得した。

 交差点の向こう側から黒い大きな帽子にホウキを持った、魔女? そんなかっこうの女の子が歩いてきたのだ。

 そうだね。

 あたしたちも仮装だと思われたんだね。




「何ここ……」

 一番びっくりしてるのはアーサーだった。流石にね? アーサーにはこの日本の風景は思いっきり異世界に見えるかもね。

 目を見開いて、懐かしさからか涙が溢れているアリア。

 ここは本当にアリアの世界なのだろうか? そうも思ったけど杞憂だった? 目の前に映る電子広告にアリマリの姿が一瞬表れて。

 それも、高校生くらいの彼女たち。

 うん。少なくともここがアリマリが存在する世界なのは間違い無いね。

「ねえ。このままここに立ってるわけにいかないからね?」

 あたしはそう言うと二人の手をとって歩き出す。とりあえずアリマリの広告が映ったビルに向かった。



「さあ、どうしよっか。とりあえずアリアのお家とか行ってみる?」

「そうですね……。そうしてもらえると嬉しいかな……」

「不安? なの? アリア」

 せっかく帰ってきたのにね。なんだか元気がないアリア。

「この世界にね……。もしあたしがちゃんと居たら……。あたし、どうすればいいんだろうって……」

 ああ。そっか。

 そういう可能性もあるのか。

 ここにアリアが居る、存在する。そういう可能性、か。

「アリアがこの世界から転移した日って、何月何日? 覚えてる? そもそもその日は何してた?」

「ごめんなさい。その辺の記憶が曖昧で……。気がついたらあの世界に居たので。でも、高2の夏までは覚えてるの」

 ちょっと自信なさげなアリア。にゅう。その夏の後の秋なら時間的には良いわけだけど?

「とりあえず今のあなたの状況を確認しなきゃだよね? ご家族は?」

「おかぁさんとまりあちゃんだけだけど……。学校! そうだよ学校はどうしてるんだろうあたし。おやすみしてることになってるのかな? それとも……」

 街はビルで囲まれてて太陽の位置はよくわからない。けど、夕方に近い時間だっていうのはわかる。学校もそろそろ終わりの時間かな?

 どちらにしてもやっぱりアリアのお家に行くしかないかな。そこで様子を見よう。

 このままここにアリアだけ残してあたしたちだけ帰るってわけにも、いかないか。な。
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