癒しの君と炎の王~炎の王は癒しの娘を溺愛中~
ファイアウォール城内

すぐに、向かいの貴賓室に、ロエルの執務用の机が運び込まれ、慌ただしくロエルの当面の間の荷物の移動が行われた。



城内使用人の休憩所

「全く、こんな我が儘なロエル様は見たことがありません。」

アルバートが溜め息をつきながら、アルバートと同じ年のメイド長に話す。スレンダーで、グレイヘアが美しくまとめられたメイド長が、アルバートにお茶を差し出しながら、

「まぁ、よろしいではありませんか。私は、今まであんなロエル様を見たことがないので、嬉しゅうございますよ。」

「はぁ~、振り回されるこちらの身にもなって欲しいですよ。」

と言って、アルバートはお茶を啜った。

「ところで、先程のお話ですが、ちょうどソフィア様と同じくらいの年のアンはいかがでしょう?若いのに良く気が利く娘で、きっとお役に立てるかと。」

「人選は任せます。とにかく、ソフィア様がお目覚めになられたら、すぐにロエル様と医師にお知らせするよう…」

「ええ…よく言い聞かせておきます。」

メイド長が振り向き、近くにいた他のメイドに、

「アンを呼んできて。」

と、声をかけた。


しばらくして、休憩所のドアがノックされ、茶色の髪が少し高めの位置でシニヨンにされているアンが入ってきた。

「メイド長、お呼びでしょうか?」

「ええ、アン。今日から貴賓室のお客様、ソフィア様の部屋付になってほしいの。」

「ええっ?!わ、私なんかでよろしいのでしょうか?」

今日のことは、ロエルが女性を連れて帰って来たとあって城中でも大いに話題になっており、その女性の部屋付ということで、アンも一瞬躊躇してしまった。

「もちろん。年も近いから、目覚めた時に安心されると思うわ。アン、お願いね。」

アルバートも続けて、

「よろしく頼みます、アン。」

「はっ、はいっ!精一杯務めさせていただきます!」
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