癒しの君と炎の王~炎の王は癒しの娘を溺愛中~
大勢の人だかりの中を隙間を見つけて進んで行くと、陽気な音楽を奏でている者や、何個も同時に玉を投げてはきキャッチしてを繰り返す者、高く飛びくるくると回る者など、人間技とは思えない集団がいた。

「すごいわ!こんな事が出来るなんて!」

思わずソフィアが声に出すと、ソフィアの隣で、同じくその集団を見ていた、酒瓶を持ったほろ酔い気味の若い男が、

「おねぇちゃんは旅芸人を見たのは初めてかい?」

と、声を掛けてきた。

「ええ、初めてよ!」

「こいつらは各地を旅しながら技を見せて金を貰うんだ。」

「そうなのね、でも私お金がないわ。」

「はははっ。無くてもいいんだ。ほら、あそこ、帽子がひっくり返ってるだろ。あそこに金を入れるんだ。金額は人それぞれだよ。」

「そうなのね。」

「ねえちゃん、今から俺と一杯つきあ…」

と、言いかけた所で、ソファの後ろから、

「悪いな、俺のツレだ。」

と言って、ロエルが現れた。若い男はロエルのすごみに一気に酔いが覚め、そそくさと逃げて行った。ロエルはソフィアの手を取ると、無言でずんずんと人だかりの中を逆方向に進んで行った。
先程よりも強く握られた手から、なんとなくソフィアにもロエルが怒っているのが伝わった。

待っていろと言われたテーブルまで来ると、

「ここで座って待ってろ。」

と、ロエルが言った。ソフィアは

「はい…。」

と、か細い声で答えるとゆっくりと申し訳なさそうに椅子に座った。
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