癒しの君と炎の王~炎の王は癒しの娘を溺愛中~
奧さんは綿が詰められた箱に、髪留めを丁寧に入れ、その箱をリボンでしっかりと結ぶと、ロエルに手渡した。
「ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
店主と奥さんがドアまで見送ってくれた。
店を出ると、
ロエルは箱を腰にぶら下げている袋の中に入れた。それから、空を見上げると、
「今にも降りそうだな。急ぐぞ。」
と、言って、ソフィアの手を取り、早足で来た道を戻って行く。
しかし、ポツリポツリと雨が降り出したかと思うと、ザーッと一気に土砂降りになった。雨は容赦なく二人を打ち付ける。その雨の中をバシャバシャと早足で進むが、
「きゃあ!」
ソフィアは思わず声が出る。土砂降りの雨で前もよく見えず、道はぬかるみ、滑りそうになる。
「仕方ない。雨宿りしよう。」
建物と建物の間の細い通りが、ちょうど隣同士の建物の屋根と屋根とが重なり合い、濡れないようになっていた。二人はその細い路地裏に入った。
「あ~あ、びしょびしょになっちゃったわね。」
お互いずぶ濡れの姿を見て吹き出した。
ロエルは頭を左右にぶんぶんと振って水を飛ばした。ソフィアは濡れたスカートの裾の方だけを絞った。
ザーザー
ゴロゴロゴロ
雨はやむ気配はなく、雷まで鳴り出し、さらにひどくなってきた。
ソフィアの身体はこの雨で一気冷え切ってしまった。
クシュンと、ソフィアがくしゃみをした。
「このままじゃ風邪をひくな。」
ロエルはソフィアに近づいた。ソフィアはびっくりして、一歩後ずさりした。ロエルは慌てて、
「すまない、服を乾かそうと思って。」
と言った。
「乾かす?」
「見た方が早い。とりあえず、見ててくれ。」
と、ロエルが言うと、ソフィアから少し離れて両腕をを軽く広げた。