癒しの君と炎の王~炎の王は癒しの娘を溺愛中~
ガラガラガラガラ
バシャバシャバシャ

路地の前に馬車が到着した。

ハリスが馬車の扉を開け、雨で声がかき消されないよう、大きな声で

「ロエル様、ソフィア様、お乗りください!」

と、叫んだ。

二人は馬車に乗り込み、ロエルとソフィアは横並びに、進行方向とは逆の向かい側に、ハリスが座った。

ハリスは、二人を探すのが大変だったとロエルに訴えていた。ソフィアは、その小言を面倒くさそうに聞いているロエルの姿が少し面白かったが、途中からは窓の外を眺めていた。ソフィアの物憂げな表情が気になったロエルは、

「ソフィア、どうかした?」

と、聞いてきた。

「馬車に乗るのが初めてで、少し緊張してるだけ。」

と、答えた。

本当は、ベンじいさんのことを考えていた。どこにいるのか、無事なのかどうか、心配でたまらなかった。それなのに、自分だけ、こんなに楽しく過ごしていていいのだろうかという罪悪感にとらわれていた。

やっぱり、もう城を出なくては。おじいちゃんを探しに行かなくちゃ。

ソフィアの心にそんな気持ちがよぎった。


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