【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

渡総務部長から渡されていた仕事のすべてを取り上げられたら、私に残っているタスクはほとんど橘専務の補佐業務になる。

そもそも自分のことは自分ですることを徹底している橘専務からは、そこまで多くの仕事が回ってくることはない。

青木先輩にも仕事は多いけれど、橘専務の来客が長引く時以外はそこまで残業の多くない部署だと聞いていたことを思い出してしまった。


どうやら私の仕事の能力は、そこまでのろまでもないらしい。

橘専務にばっさりと言われたからか、気を張っていた肩の力がふっと抜けたような感覚だ。

いつも流れるように行っていた作業を丁寧にこなして、それでもすこし時間に余裕が出てしまった。

橘専務からはほとんど必要がないと言われているお茶出しでもしようかと思いついて、給湯室へと足を向けた。

ただ、会うための口実を作っているような気がする。

自分がひどく悪い人間のような気がしてしまうから、それ以上考え込むことをやめた。


コーヒーはブラック。

あんなにもあまい人なのに、自分自身ではあまいものはそんなに好んでいないと言っていた。

家で仕入れた情報を職場に生かしてしまっていると気づいたときには、すでに専務の役員室をノックしてしまっていた。
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