【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

「ひぁ」

「声もかわいい。……別に、俺はきみのものにしてくれて、構わないのに」

「な、に言ってるんですか」

「してくれないんですか?」

「だめ、だめです。遼雅さんは、遼雅さんのものです」

「じゃあ俺があげるって言っているから、柚葉さんのものでもいいですよ」


ちゅ、と耳に音が反響している。

直接口づけられて、眩暈がしてきた。ほしいと言えばもらえるのだろうか。おかしなことを、考えている。


「りょうが、さん、だめです」

「うん?」

「ん、それ……、だめなあまやかし、です」

「あはは、だめですか」

「だめです、安売りしないでください」

「安売りしても、買ってくれない柚葉さんが悪い」

「ひぅ……っ」

「スーパーの野菜はきみのものにしてもらえるのに、俺は食べてもらえないんですか?」


からかわれている気がする。

何が何だかわからないまま、身体がくるりと回されてしまった。振り向かされて、斜め上に見える遼雅さんのひまわりが、夏の日差しみたいにぎらぎら輝いている。

なぞるようにあごの下に長い指先で触れて、誑かすように囁いた。


「柚葉さんが俺を食べるか、それとも俺の質問に答えるか。ひとつ、選んでください」


ほとんど選択権を与えていないような声だ。やわらかに笑って、声を失っている私の唇に、音を立てて吸い付く。
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