【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
慣れたような顔で笑っていた。
ちらりと見る視線の先に、柚葉の姉がいる。親族の席は俺たちが座る予定のテーブルの斜め向かいにあって、すでに両家が歓談している様子だった。
柚葉の姉の結婚相手もこれまた綺麗な顔立ちの男で、一風どこかのモデルにも見えなくはない。それが建築士として普通に働いているというのだから、世界はおかしい。
「柚の結婚相手、橘涼子の息子なのか」
「……やっぱそう見える?」
柚葉はわかっているのだろうか。
橘の両親は服飾関係の仕事をしているらしいから、当日のドレスは有無を言わせず義理の両親の世話になってしまっていると言っていた。
柚葉が結婚をやめる選択肢をなくしてしまった大きな要因の一つでもある。
一眼のカメラを首から下げた女性が、興奮した様子でカメラの画面を、隣に座っている柚葉の父に見せつけている。
柚葉の父は、おそらくすでに泣いてしまったのだろう。ハンカチを片手に何度も頭を下げながら、一眼の画面をのぞき込んでいた。
「……とんでもなくすげえ家に嫁ぐんだな」
橘涼子は世界を股にかけて活動するデザイナーで、熱狂的ファンも多い著名人だ。だとすると横に座っている紳士は、間違いなく橘のブランドをグループ展開させている凄腕の経営者だろう。