【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
最近は新規事業に乗り出して、20代後半からの路線を狙った新ブランドを息子が手掛けていると噂になっていた。

橘遼雅が、全くもって畑がちがう会社に入社したのはなぜなのだろう。それも専務取締役にまでなっていると考えると、どう考えても橘遼雅の頭の中は理解ができなさそうだ。

呆然と見つめていれば、ふっと柚葉に似た顔の女性がこちらを振り向いた。


「マナ! あ、そうちゃん!」


柚葉の姉——萌さんは、どちらかというと着物よりもドレスのほうが似合う女性だと思う。

思った通り、すこし落ち着いた色合いのドレスを着た女性が、臆することなくこちらへと歩いてくる。柚葉と萌さんは、似ているようでそんなに似ていない。

柚葉は結構人見知りをするほうだが、萌さんは道ゆくおばさんと長時間話し込むタイプだ。柚葉の人見知り癖は、間違いなく俺の指導のせいなのだが。


「マナ! おかえり~。まーたおっきくなった?」

「なってねえよ。……元気してたか?」

「うん。もう、皆元気! テレビでマナの試合見て、皆でぎゃあぎゃあ言ってるよ! この間のハットトリック! すごかったねえ」

「萌、そんな言葉覚えれたのか?」

「マナ、ひっどい。柚に教えてもらったんです~」


柚葉の姉と学さんは同期で、高校まで同じ学校に進学していたらしい。

さすがに仲が良い二人を見ながら、中央の席にわが社の会長と社長が並んで座っているのが見えた。

本当に、何度見ても思うが、強烈な後ろ盾だ。
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