【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
俺が結婚式を開いたとしても、まさかこの二人は駆けつけてきたりしないだろう。

同じ席に人事部の部長が座って隣の男と談笑している。どうやら柚葉と橘の結婚について把握しているのは、ごく少人数らしい。

柚葉からも2人の婚姻については内密にしてほしいと言われていた。

こんな面倒な話題を俺が口に出すことは一生ないだろうが、一応言われた通りに頷いておいたのが、あの日の蕎麦屋での別れの言葉になった。


ひとしきり幼馴染コンビが話しているのを聞き終えて、学さんと一緒に席に着く。ちょうど席順は俺と学さんが隣になっていた。

柚葉らしい気遣いに胸が痒くなる。


「柚に先越されるとはな」


特段残念がっていなさそうな男がつぶやく。同じように首を振ろうかと思って、やめてしまった。

俺はどこかで、柚葉が誰かの元へ去って行ってしまうことをわかっていた。

望んでいたと言ってもいいかもしれない。このままそばに在れば、またいらぬ期待をしてしまいそうで、辟易していたとも言えるかもしれない。


「萌さんよりは結婚遅いじゃん」

「あいつは……、まあ」


萌さんは大学卒業と同時に結婚している。

高校生のころからの付き合いで、大学卒業を期に、今の旦那がすぐにプロポーズをしたと聞いていた。
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