【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「うわ、学さん、やめっ」
「はは、わりわり。お前ほんっと俺のこと好きだよな~?」
「そりゃ学さんかっけえし」
「萌に爪の垢を煎じて飲ませてえわ」
けらけらと笑って、手を離された。
散々茶化すくせに、萌さんを見つめる視線はいつもやさしい。どう見ても大事な人を見つめる瞳だから、胸の奥に刺さる。
「まな、」
「終わったら二人で飲みに行くか」
声を遮って、やわく笑った。萌さんから離した視線はあっけなく俺のほうへと戻ってくる。
尊敬する兄貴分で、今もずっとその道を応援しているし、永遠に抜かせない背中だと思う。
「髪、直してこい」
「ん、行ってくる」
すべてを見抜かれているのかもしれない。
小6のときに、最後の学習発表会でシンデレラを演じたのが柚葉だった。
王子役の選出は二週間も拮抗して、なぜか俺がやることになった。曰く、一番害がなさそうだかららしい。
昔から柚葉の周りの女子は、柚葉の強力な味方だ。柚葉を嫌う人間はほとんど見たことがない。つねに周りに愛されてきた生物だ。
女子の集団に囲まれて、有無を言わせぬ圧力に屈して王子役をやることになった。柚葉のドレス姿を見たのはあの時が最後だった。
『そうくん、王子様、似合うなあ』