【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

大学卒業と同時に家を出る学さんに「柚、よろしく」と頼まれて、中学以降はとにかく柚葉を徹底的に助けてきた。

ロリコン教師も塾で待ち伏せしてくる他校の年上も、毎朝靴箱に入れられる気色の悪いラブレターも全部柚葉に危害が及ばないように、徹底的に避けた。

柚葉にいくつか約束を科して、どうにか守らせた。


やってきたことが柚葉のためになったのかどうかはわからない。



男子トイレで適当に髪を直して、思考を切り替える。

何度考えたところで、柚葉は橘にあっさりと手を引かれてしまった。俺が今まで見た中でも一番優秀そうな男だから、邪魔をする必要もないはずだ。


「今までは邪魔してたのかよ」


鏡越しに突っ込んで、一人で笑ってしまった。

どうせ、学さんに願われなくても、俺は柚葉にまったく同じことを仕出かしていただろう。おそろしく面倒な感情だった。


『俺がもらってやろうか』

『そうくんに、もう迷惑かけないように頑張るから、好きな人と結婚してほしいよ』


残酷なほどにやさしい女だから、なぜだか、ずっと、俺の胸に住み着いている。

大学卒業の日、俺が問いかけたバカらしいプロポーズに、柚葉のアホみたいなやさしさが突き刺さった。

大事にされているとわかるから、たまらなくなる。


「迷惑なんて、言ってねえよ、ブス」


< 337 / 354 >

この作品をシェア

pagetop