半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 リリアは、めでたい日ゆえか、やけにテンションが高いカマルを見下ろした。パッと思い付くことだってなく、頭の狐耳をやや落として困り込んだ。

「必要ないわよ」

 注目が集まっているのに気付いて、そう答えた。

 カマルは「えぇぇ」と納得いかない様子だ。

「あ。なら、姫様の恋のお助け、とかは?」

 カマルの方が、パッと思い付いた様子で提案してきた。

 そんなに簡単なことであれば、悩んでいない。騒ぎを聞き付けた他の生徒達も、移動がてら立ち寄ってくる中、リリアは犬歯を覗かせて強めに返した。

「私は、立派な大妖怪になるの! だから、結婚なんてしないんだからっ」

 それを耳にした近くの令嬢令息らが、「え」と困惑を漂わせた。

 カマルは焦って、そちらにも気が回らないまま、おろおろとリリアを宥めにかかった。

「ご事情はちゃんと覚えてますっ。ただ、えっと、協力してもらったおわびです!」
「別に、おわびなんていらないわよ」
「そこをなんとか!」
「どんな言い分? だから、して欲しいことなんて、ないんだってば」
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