半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 リリアは、その正装の騎士服を目に留めて冷や汗を覚えた。気のせいでなければ、その衣装にされている上品な刺繍の柄は『第二王子』の所属紋だ。

 ――だが、それよりも、直後にやはり顔へ意識が戻っていた。

 カマルが連れてきたその人は、確かに小説の絵と雰囲気がとても似ていた。優しげな印象の端整な顔立ち、疑問符いっぱいの表情も、すごくハンサムで……。

 正面からガン見した次の瞬間、リリアはかーっと赤面した。

 嘘でしょ。現実に、妄想していたあのイケメン騎士様がいるだなんて!

 リリアは、ついよろけてしまった。もう彼に見られているだけで無性に恥ずかしくなってきて、頭の中は妄想と現実でこんがらがった。

「あの、その、違うんです。私、そのあやかしの子を、止めようとして」

 普段の口調はどこへ行ったのか。リリアは、すっかり大人しい娘のように、しどろもどろに言った。

 でも、言葉はそこで途切れてしまう。

 サイラスが「は」と呆気に取られた声を上げた。それを耳にした瞬間、リリアはみんなに見られていることを猛烈に意識して、気付いた時にはカマルを抱えて空を飛んで逃げ出していた。
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