半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「ただの憧れなの。こんな小説のヒーローなんて、いるのかしらって思っていたから」
「実在しているのを見られて良かったじゃないですか。案外、ああいう本って、実在している人物を見て、ネタにされて書かれた可能性もありますよね」
「うん、そうかもしれないわね。私、尊敬してるわ」

 一人、部屋の中にいてもワクワクさせてくる。そんな素敵な作品を書いて、それをこうしてここで読むことができて、リリアは読める幸せを噛み締めている。

 床に降りたカマルが、ちょっと毛並みが乱れた頭を直しながら、リリアを見上げた。

「じゃあ、俺、姫様には新作の『れんあいしょうせつ』?とやらを、プレゼントした方が良かったですかね」
「言い方があやしいですが、間違ってはいません」
「カマル、メイちゃんにも聞いてみたら、教えてくれると思うわ……」
「そっか! 俺、じゃあそろそろ行きますね!」

 悪いやつではないのだ。一生懸命ただし、真っすぐだし、純粋だし……ちょっとそのへんで、考え方にズレがあるだけで。

 それに本日は、彼にとってめでたい入籍日だ。

 リリアが諦め気味に伝えれば、カマルが満面の笑みを浮かべた。ぴょんっと窓枠に飛び乗ると、そのまま「よいしょ」と妖怪国へと続く〝入り口〟を開いて、飛び込んでいった。

 そのまま、静かに〝入り口〟が閉じていく。
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