半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 将来、彼女の護衛もできるのなら、喜んで引き受けるだろう。

 ――まだまだ、行き先は不穏であるけれど。

「あの、殿下……その、なんだかすみません」

 コンラッドは、続く沈黙にいたたまれなくて声を出した。

「えぇと、彼女があれですよね。僕に剣と魔法の教えをお願いしてきた時に言っていた、レイド伯爵家の令嬢で、ご婚約者様」

 護衛騎士という立場もあって、社交の場から遠目では何度か拝見している。でも、そのうえでの台詞を言ったら、ますます機嫌を悪化させそうでコンラッドは口を慎んだ。

 しばらく、サイラスの方から反応はなかった。

 彼は、頬杖をついたまま車窓の向こうを眺めている。待つコンラッドは、やはり胃がキリキリした。あの狸、殿下は知っているようだったが、一体何者だったのか。

 そう思っていると、サイラスの声が上がった。

「……あんな顔、見たことがない」

 ぼそり、と苛々した表情で呟く。

「本当に『騎士』が好みであるらしい――良かったな、コンラッド。婚期がくるかもしれんぞ」
「ごほっ」

 そのようやくかけられた第一声に、コンラッドは咽た。
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