半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「はいはい、俺が当家の執事です。〝人間の第二王子殿下〟様、自己紹介が遅れて申し訳ございません。俺は妖狐のアサギと申します。どうぞお見知りおきを」

 ころころ笑うように挨拶したアサギを、サイラスがじろりと見やる。

「ふん。人外の名前など覚える気はない」
「わーお。それ、姫様がおっしゃったように差別言葉ですからね」
「あ?『姫』?」

 胡乱げな眼差しを向けられ、アサギが「おっと」と素を腹の中に収める。

「いーえ、なんでもありません」

 本当か嘘かも分からない笑顔で、彼がそう答えた。

 まるで人間にしか見えないせいか、伯爵家執事があやかしとは思えなかったらしい。やりとりを聞いた王宮の魔法戦士部隊の男達が、静かな動揺を見せている。

 リリアとだけでなく、今度は伯爵家の執事とまで睨み合いになりそうだ。

 そうサイラスのことを推測したハイゼンが、先程よりも一際大きく「うぉっほん!」と耳障りな咳払いをした。

「ま、まぁ、殿下。可愛らしいご令嬢様ではございませんか。若い者同士の方が、話しも進むでしょうし、まずは場所を移動して二人で――」
「冗談だろう。俺は一度だって話したいなんて口にしてない。たかが伯爵家の令嬢の分際で、二年以上も顔を見せるのを渋られたうえ、期待以下の顔には腹も立つ」

 サイラスが棘を隠しもせず言い放った瞬間、どうにか笑顔を張り付かせていたリリアのこめかみに、ピキリと青筋が立った。
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