あなたの願い、残酷に叶えます。
見えていないんだ……!


充男の時にドアから入ってきたから、あの女は実在するのかもしれないと思っていた。


でも、今回は見えない……。


「翔、もう黙って」


静かな声で言ったのは景子だった。


景子は青ざめていながらも、しっかりと画面を見据えている。


「え?」


「真美はもともとイケニエだった。ささげるべきだった人間なんだよ」


景子の言葉に翔はまだなにか言いたそうだったが、結局なにも言わずに口を閉じた。


ついさっき、翔だってイケニエを出すことに賛成していたのだ。


翔は画面から視線を外して、うつむいた。


「どうぞ、その子を差し上げます」


景子がゆっくりとした口調で言った。


「どうぞ、その子を差し上げます」


あたしも景子の言葉を繰り返す。


「どうぞ、その子を差し上げます」


航大も。


「どうぞ、その子を差し上げます」


そして、翔も。
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