あなたの願い、残酷に叶えます。
「な、なんでそんなこと言うの!? あたしの部屋になにがいるの!?」


なにも見えない真美がパニック状態になり、勢いよく立ちあがってドアへと走る。


それでもあたしたちはやめなかった。


「どうぞ、その子を差し上げます」


「どうぞ、その子を差し上げます」


「どうぞ、その子を差し上げます」


まるでお経のように繰り返す。


真美はドアが開かなくて発狂寸前だ。


「出して! お母さんいるんでしょ!? ここから出してぇ!!」


しかし、誰もいないことはわかっていた。


ここはいつもと同じ空間でありながら、もうすでに異質な空間になっているのだ。


出られない。


逃れられない。


助けは来ない。


女がドアの前にいる真美の真後ろに立った。
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