【完】イミテーション・シンデレラ


こちらを向かせた昴が、私の唇を掴んだ。
熱っぽい昴の瞳と私の瞳が重なる。

キスされる、と思った瞬間だった…。
コンコンと楽屋をノックする音が鳴り響く。 思わず昴の体を両手で突き飛ばす。

「はーは~い!ど~ぞ。」

「失礼しまぁーす!岬さんがいるって聞いて。
あ!大滝さんも!!」

何というバッドタイミング。 楽屋に入って来たのは、梨々花だった。
昴の姿を確認すると顔がぱあっと明るくなる。 なんつー分かりやすい奴なの。

「ああ、梨々花ちゃん!この間ぶり!」

「この間はありがとうございましたぁ。 岬さんに会いに来たら、大滝さんにまで会えてラッキー。」

「い、今ねウェディングショーについての話をしていた所なのッ。
昴も近くのスタジオで偶然収録があって、暇だったみたいなのよ!」

どうしてこんな言い訳染みた事を。
焦る私を、昴は少し不審がっていたけれど、梨々花へいつもの優しい笑顔を向ける。

結局昴は誰にだって優しいんだ。 私に見せていたお揃いの笑顔を、梨々花に見せるのは胸がずきりと痛む。 分かっていた事じゃないか。

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