【完】イミテーション・シンデレラ
サッと気配を消してそのまま逃げようとした。
「芽衣ちゃん!」
しかし当の静綺は嬉しそうにその女の名を呼んだ。
身震いが止まらない。 良い歳をして、義理の娘に自分を’芽衣’ちゃんと呼ばせる魔女を前にして。
「うふふふふふ。静綺ちゃんすっごく綺麗ッ。私もウェディングドレス着たいっていったのに、真央に馬鹿だろって言われたの。
悲しくなって泣いちゃったら、ひー君が今度写真を取りに行こうって慰めてくれたのッ…。
もぉ嫌だぁ。こんな地味な黒留袖…」
「そんな事ないですよッ…。今日の芽衣ちゃんすっごく綺麗です…
美しい人は何を着ても似合ってしまいますねぇ」
静綺の言葉に満更でもなさそうに微笑み、静綺のお腹をなでなでと撫でる。
…姫岡 芽衣(年齢不詳。どう見ても20代にしか見えないが40代後半か50代前半と思われる) は真央の母親で、昔は舞台女優だった。
魔女と呼んでいる理由は、現役時代から全く歳を取らない程美しいからだ。
ちなみに彼女の言うひー君と言うのは、真央の父親である。
最悪だ。最悪。 気が付かれぬようにそっと控室から出て行こうとすると、ぎゅっと首根っこを引っ張られる。それはそれは馬鹿力である。