かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「陸の忘れっぽさは俺もわかってるから。こうしてすっぽかされるのも初めてじゃないし、免疫もついてるから問題ない」
「免疫がつくほど何度も……すみません」
「まだ、待ち合わせ場所が外じゃなくてよかった。この時期は夜でも暑いから、冷房の入った部屋に入れてくれて助かってる」

桐島さんがこうは言っていても、申し訳なさは消えず眉を寄せうつむく。

陸は本当に人との約束をすぐに忘れる。
特殊能力といっても過言ではないほどスッカリ、ポッカリ忘れてしまう。

一番厄介なのは、本人にちっとも悪気がないってところだろう。
本当に忘れていたって顔で驚かれたあと、〝本当にごめん……!〟とおでこを床に擦りつけられてしまったら、それ以上責められない。

私への謝罪と同じことを友達全員にしているとしたら、日本中探してもあんなに安い頭はないと思う。

そのうち重力に逆らって浮き出すんじゃないだろうか。

「でも、相沢さんと陸、仲がいいんだね。社会人になってまで兄妹で同居なんて聞いたことがなかったから驚いた」
「……まぁ、安上がりですし。ここ、リビングを挟んでふたつ部屋があるから、個室も持てるし丁度よくて。それになんていうか、陸って若干シスコンなところがあるんです。離れて暮らしてると電話が鬼のようにかかってくるのが想像つくので」


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