かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「私は……桐島さんみたいに、振り回されるのが楽しいとは思えないですけど、でも、桐島さんのことを考えてもやもやするのは、嫌じゃないです。より知りたいとも思いますし……ただ、ひとつ不安なことがあります」
「不安?」
この気持ちに気付いてからずっと心の隅にあった不安。
あまりにバカバカしいとは思いながらも捨てきれなかった不安を白状する。
「桐島さん、私が初恋ってことですか?」
初恋がいつかを聞いた時、桐島さんは〝今〟と答えた。
あれは本当だったのだろうか……と思い聞くと、桐島さんが思い出したように言う。
「そういえば、いつだったかそんな話をした覚えがあるな。そうだよ。割と他人に対して冷めてたし、興味を持ったのも好きになったのも澪が初めてだけど……どうかした?」
私がショックを受けた顔をしていたんだろう。
不思議そうに聞いてくる桐島さんに、目を伏せて口を開く。
「私も初恋なんです」
「うん。……それが?」
「ふたりして初恋って、なんか嫌だなって。あ、いえ。桐島さんが過去に誰かをすごく好きになったなんて話を聞かされたら、それはそれで嫌かもしれないですけど……その、あるじゃないですか。昔からの言い伝え的な、その」
今更ながら、そんな事実無根な言葉を声にするのが恥ずかしくなって口ごもると、桐島さんは少し考えたあとで、「ああ」と笑顔を浮かべた。
「初恋は実らないってことが言いたいのか」
「……はい」
しかもふたりして初恋って絶望的な気がする。二重でその言葉の呪いがかかっている感じだ。
別に本気で信じているわけではないけれど、なんとなく捨て置くこともできず、小さな不安の種として私の中にずっとあったその呪い。
子どもっぽいことを言っている自覚はあっただけにバツの悪さを感じてうつむいている私の顎に、桐島さんの指がかかる。
くいっと顔を持ち上げられると、すぐそこに桐島さんの顔があり、胸が跳ねた。