東京ヴァルハラ異聞録
「さて。そろそろ秋本と神凪の方も話は終わったかな。行ってみるとしよう」


そう、恵梨香さんが呟き、皆をビルの中に誘導し始めた。


次々とビルの中に入って行く中で、俺は日本刀を手にしたまま天を仰いで。


俺の力で勝てたわけではないという、ある種の無力感に打ちのめされていた。


「昴くん?どうしたの?皆行っちゃうよ?」


そんな俺に声を掛けたのは沙羅だった。


「……沙羅も行けばいいよ。俺はもう少しここにいるから」


もしも俺に、高山真治と同じくらいの力があれば、梨奈さんも篠田さんも死ななかったかもしれない。


いや、高山真治に力を借りていても、俺が扱い切れていなかっただけだったかもしれない。


「昴くん。強くなったね。初めて会った時は、戦う事を嫌がっていたのに。こんなに強くなった」


俺の背中に手を当て、そう呟いた沙羅。


「俺の……力じゃないよ。強くなったって勘違いして、人から借りた力だったって気付いてガッカリしてる、情けないのは変わってないバカな男だよ」


もしも、高山真治の力がなくなれば、俺にどれだけの力が残っているというのか。


きっと、将太達と戦える程の力なんてないだろうな。
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