東京ヴァルハラ異聞録


「おい、お前はボサッと見ているだけなのか?だったら、俺達の邪魔だけはしてくれるなよ」




女性の動きに見とれる俺に、背後から声を掛けたのは大友だった。


ビルの屋上から、ルークの弱点である頭部に矢を射ながら、一箇所には留まらないように、移動を続ける。


……西軍が心配だけど、化け物達は、この街に住む人間の共通の敵だ。


所属する軍とか、そんなものは関係ない!


日本刀はずっと鞘に納まっている。


いつでも居合斬りは出来る。


「よし……行くぞ!」


屋上を走り、柵を飛び越えた俺は、ルークの腕に飛び乗った。


そして、垂直に近いそれを一気に駆け上がる。


「な、名鳥!あれ!」


「なんだいなんだい、雪子ちゃん。手を休めてる暇なんてないって言うのに……」


地上からそんな声が聞こえたけど、それに答えている場合じゃないな。


僅かにある鎧の突起を掴み、肩まで到達する事が出来た。


この巨体からすれば、俺なんて目障りなハエみたいな存在だろう。


だけど……舐めるなよ!!


肩から頭部に向かって駆け出した俺は、日本刀の柄に手を掛けて、それを引き抜いた。


光がルークの頭部の右側に走る。
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