東京ヴァルハラ異聞録
「悪いが俺は、そこまで出来た人間じゃないんでね。死にゃあしないって、今回ばかりは言えそうにないだけだよ」


二歩、足を前に出した直後、朝倉に一気に距離を詰める。


だが、朝倉も警戒をしていたようで、名鳥に向かって槍を突き付けたのだ。


槍が、無数の刃に変わるその瞬間。


名鳥のショットガンが槍の切っ先に合わされて火を噴いた。


刃に変化する直前の零距離射撃。


「つっ!!」


前方に突いた槍が、銃の威力に負けて後方に弾かれる。


「ここまで寄っちまえば、それで突く事も出来ないだろ」


左手で朝倉の身体を抱き寄せ、ピタリと密着してそう呟く。


「ふ、ふざけるなっ!」


だが、朝倉の膝が名鳥の股間を蹴り上げ、それはあっさりと解かれてしまう。


「ふぐぅっ!!そ、そいつは禁じ手だろ……」


「戦いに禁じ手もクソもあるかっ!」


朝倉が飛び退き、槍を構えるまでに、名鳥が背中を叩いて何とか動けるまでに回復する。


恐らく、それほどダメージはなかったのだろう。


屈みながらショットガンを向けると、朝倉の身体がビクンと反応して手を止める。


「どうした?恐れているのか?一度防がれたんだ、無理もない」
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