東京ヴァルハラ異聞録
恵梨香に遅れる事0.5秒。


秋本と明、三原までもが振り返り、その男を見た。


「おい!なんだありゃあ!」


「あれは……御田英太?『西軍の厄災』じゃないのか?」


秋本の問いに、恵梨香が戸惑ったのはその容姿にあった。


過去に見た御田とは様子が違っていたからだ。


巨大なバトルアックスが武器の御田だったが、手にしているのは巨大な槍。


さらに、長い髭が生えて、別人のようになっていたのだから。


「なんだ……この感覚。あれは本当に御田なのかよ」


まるで、ビショップを前にしているかのような強烈な力に、秋本でさえ後退る。


「ぐううぅぅぅぅっ……ついに現れおった。お前達、武器を持て!戦える者はバベルの塔に向かうんじゃ!!始まるぞ!最後の戦いが!!」


「な、何言ってんだこのおっさん……大丈夫かよ」


御田を見て、伊良が不安そうに呟いたが、恵梨香と明には何となく、その言葉が理解出来た様子。


「皆、それぞれの軍に戻り、戦える者を集めて両国へ向かえ!!今がバベルの塔に向かう時だ!」


「はぁ!?今からかよ!ったく、もっとこう、準備をしてから挑むもんだと思ってたがな!」


文句を言いつつも、ただならぬ気配を感じた秋本は、事態が飲み込めないまま北軍に向かって走って行った。


「伊良さん、一旦南軍に戻りましょう。人は少ないけど、俺達も準備を!」


三原と伊良も南軍へ。


「そういう事なのだな?少年」


そう呟いて、恵梨香はバベルの塔を見上げた。
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