ぼっちのキミに毒はまり ゾルック 一人目

「マジかぁ……」


 かすかに聞こえてきた、
 綺月君のため息交じりの声。


「和、先に帰って」


「なんでだよ?
 綺月が忘れ物があるって言うから、
 教室に戻ってやったのに」


「探すのに時間かかりそうだから。
 和、また明日な」




 上靴を引きずったような一人分の足音が、
 廊下に消えていったけれど。


 まだ綺月君は、
 教室に残っているってことだよね?


 お願い。
 綺月君も、早くいなくなって。


 泣き声。
 漏れちゃいそうだから。


 


 ん? へ? 

 ど……どうしよう……

 綺月君の足音が、こっちに近づいてきた。


 もしかして、
 教卓の下に隠れているって、バレたの?




 コンコン。


 
 ひょぇ!!!! 

 綺月君が、教卓を叩いたんだよね?

 



 出られないよ。
 返事すら、できないよ。


 こんな、涙でぐちゃぐちゃな顔。

 綺月君に、見られたくないもん。

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