溺愛フレグランス


「もう、大きな声で呼び捨てはやめて」
「何で? 久しぶりに幼なじみに会ったのに、名前で呼んじゃダメなの?」

私は顔をしかめて朔太郎を見た。そして、大げさに首を横に振る。

「あのロビーには私の知っている人だらけなの。
晴美って呼ぶ男が現れたら、みんなの注目の的になるでしょ。
ただの幼なじみなのに」

私はそう言いながら、まじまじと朔太郎の容姿をチェックした。
確かにお母さんが言うように、高校生の頃とほとんど変わっていない。
特に、今日は、ジーンズにセーターという普段着のせいか、どう見ても私より年下に見える。

「朔、全然変わってないね。
お母さんが高校生みたいよって興奮気味に言ってたから」

朔太郎は嬉しそうに微笑んだ。その勝ち誇った微笑みは、ある意味セクシーで三十歳を過ぎた男の凄みも垣間見える。
朔太郎って、いい感じに歳を重ねてる…

「そういう晴美だって全然変わってないじゃん。
そのまん丸い顔や垢ぬけないところも、俺の知ってる晴美のまんま」

私は朔太郎の腕をギュッとつまんだ。
他の男性から言われたらしばらくは落ち込みそうな言動も、朔太郎は大丈夫。だって、それは紛れもない事実だし、朔太郎に言われるのは挨拶のようなものだから。

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