溺愛フレグランス
「それより、今日はどうしたの?
私、忙しいんだから、用事がなければもう行っていい?」
朔太郎はほっぺを膨らませて拗ねたふりをする。
「住民票の異動の手続きに来たんだよ。
晴美が暇だったら、今日の夜にでもご飯食べに行かないかなって思って。
ということだから、七時に家に迎えに行く。
智也の店に行く事になってるから、じゃあな」
私に考える暇も与えず、朔太郎はあっという間にいなくなった。
朔太郎がいなくなって、外がひんやり寒い事に気付く。
もう、十一月も後半で、慌てて出てきた私は薄手のセーター一枚だった。
智也のお店はハワイアン風の居酒屋で、この小さな街で繁盛している。でも、コロナになった今はどうなのかは分からない。
朔太郎の大の親友の智也の顔を思い出し、久しぶりに会いたくなった。
美味しいロコモコ丼も食べたいし…
私は朔太郎のペースに喜んで乗っかる事にした。