翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

教室が閑散とした頃、少しだけ雨が強くなった。


手元には翔ちゃんの傘があったけど、なんだか濡らしちゃいけない気がして、初めから使うつもりなんてなかった。


「あれ、まだいたの?」


ぼんやり外を眺めていた私に教室の入り口から声をかけたのは、同じクラスで後ろの席の岡崎(おかざき)君。


「ノート真っ白じゃん。
勉強してるフリを頑張ってたの?」


とりあえず開いてあった数学の問題集のページは、新品同様みたいにつるつるだった。


「いや、あの……そうかも」

恥ずかしくってえへへと笑って誤魔化した。

「彼氏待ってんだ?」

岡崎君が、少し間をおいて言った。

「か、彼氏!?」

それって誰?どこ?

「ほら、A組の。なんか態度のデカイ、やたら目立つイケメン」

「態度デカイって!」


たぶん彼が言いたいのは翔ちゃんのことだ。なんかおかしくて笑ってしまった。


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