翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
「うわぁ、想像以上!」
降りだしたばかりの雨に打たれたアスファルトからいやな熱気が放たれて、それが足許から身体にベッタリまとわりつく。
辺りは夕暮れ夏。雨の匂い。
「ちょっと降りだしたけど、ほんとに大丈夫?風邪ひいたりしない?」
そう言われて気付いた。
今朝まで寝込んでたんだった。
翔ちゃんが熱を下げてくれたんだった。
『絶対濡れるなよ?』
雨の放課後の翔ちゃんの口癖が聞こえてしまった。やっぱり濡れて帰っちゃいけないような気がする。
「岡崎君、走ろう?この先の本屋さんでちょっと雨宿りしよう」
岡崎君をほったらかして思い切りダッシュした。
「ちょっと、待ってよ平澤さん!」
大丈夫。まだほとんど濡れてない。