翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

「翔ちゃん熱あるんでしょ、早退したんでしょ?」

「腹が痛くなっただけだよ」

「嘘だよ。寝てなくちゃダメじゃん。
出歩いたらダメじゃん」


心配なのはこっちの方だよ。


「なんで傘持ってないわけ?」

「……それは」

「2本持ってるはずだろ」

「翔ちゃんのは……ちゃんとここにあるよ」

「だったらそれ使えよ。バカか」

バカって。

「いろいろ……あるんだよ!」

なんかすごく、頭にくるんですけども!

「なんだよ色々って。ほら帰るぞ」


怒っていたはずなのに、今まで何百回と言われたことのあるそんな普通の言葉をかけられただけで、もう飛び跳ねたいくらい嬉しくなってる。

でもその言葉は、じきに奥寺さんだけのものになる。
< 128 / 347 >

この作品をシェア

pagetop