翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
考え込んでいたら実日子さんのスマホが鳴って、それを見た彼女が絶望的な顔で私を見た。
「美緒ちゃん、サイアクだ……」
深い深い地の底へ沈みこむようなため息。
「森野サカナの漫画全17巻を返してほしければ合コンに参加しろ。だって。コンパの誘いっていうか、脅迫文だよねこれ」
美人の実日子さんの、この世の終わりみたいな絶望的な顔を初めてみて、ことの重大さがすごく伝わってきた。
「行った方がいいと思います。すごく大事なんでしょう、その漫画」
「美緒ちゃん……」
ほらね、今にも泣き出しそうだもん。
「ありがとう人質救いに行ってくる」
「森野サカナの良さもわたし、わかります!しっかりお迎えしてきてください!」
そう言ったら実日子さんに抱きつかれてしまった。キレイな髪が、頬に触れてドキドキしてしまう。
「神が多すぎて困っちゃうのほんと。ねぇ今度一緒にこの映画見ようね?一緒に泣こうね?漫画もいつでも借りに来てね?美緒ちゃん大好きだよ!」
実日子さんはそう言って、荷物をまとめて渋々玄関へ向かった。