翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
あんなデカデカとゼッケンの付いた服を着てたせいでこいつは美緒のことを「岡崎さん」だと思ってるんだ。
「先生ほら谷間谷間!」
「おまえいい加減にしろよ」
ムキになって説教したら、こめかみの辺りを何かが刺した。
「痛ってぇ……?」
なんだ?……笹?
「今頃七夕のお飾り撤去するんだ。もうだいぶ過ぎてるよね、そんなんで願い事叶うのかなぁ?」
商店街に昔からあるスーパーの軒先に、撤去時期を忘れられてくたびれたようにそよいでる七夕飾りを、店のおっちゃんが片付けようとしてるところだった。
目の前の笹の葉に、願い事が書かれた短冊や飾りがたくさん下げられていた。
濡れてしまったものもチラホラあって、『サッカー選手になりたい』って、子供の字が滲んでいた。