翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
毒舌を吐くのをやめ、悪態をつく気配もないのがおそろしい。
「……なるほど。そっか、あれだね」
「あれって?」
この状況に飽きたのか、ソファにふんぞり返って変えたばかりのネイルをいじりだした。
「最近のあんたってなんか男としてつまんないからいつ愛想つかされてもおかしくないもんね。あーあ、美緒ちゃんとうちが疎遠になったら辛いなぁ。でも好きな人ができたんじゃ仕方ないか」
「……好きな人?」
いや。それは可能性として、あり得る。
「そうだよ、彼氏君ができたんだよきっと」
「彼氏?」
「それかあんたが普通に嫌われたかのどちらかだね。なんか無神経なことしたり言ったりしたんじゃないの?」
「いや……うーん」
そんなことを言われても、身に覚えがない。
「よし、ちょっと美緒ちゃんとこ行ってくるからあんたは橘之宮ちぇりこ先生の『コットンキャンディーハニー』の23巻あたり読んどきな」
「……橘之宮ちぇりこ……?」
あの大量の漫画コレクションの中からの選りすぐりがそれ?
しかもなんで今それが必要なのか。