無口な彼の熾烈な想い
ひらのペットクリック2階の兄夫婦宅には、鈴がいつでも寝泊まりできるようなゲストルームがある。

当直明けには、昼過ぎまで仮眠してから午後2時から始まる診察に当たるのが鈴のスタンダードだ。

獣医師が3名もいるため、あえて動物看護師は雇っていない。

兄夫婦も鈴も、トリミングや動物の世話、受付業務などは何でもこなす。

3人とも無類の動物好きなので苦にはならない。

鈴は、玖美が準備してくれた美味なる和朝食をお腹におさめると、温かいお風呂に浸かって一息つき、部屋着に着替えてゲストルームのベットに横たわった。

夜中は2、3時間おきに起きては、ゴン太とピーの様子を見に行った。

一部の大学病院や大病院を除けば、ずっと人間が起きていて動物を監視することは不可能である。

ひらの動物病院でも、3人でできる限りの範囲で動物達を見守ることにしている。

動物相手とはいえ、物言わぬ相手の治療だ。

メンタルはそれなりに削がれる。

仮眠はしていたとはいえ、朝の8時から14時までの6時間でも眠れるのはありがたい。

鈴は温かい毛布と布団にくるまって再度、眠りに落ちた。
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