無口な彼の熾烈な想い
「じゃあ、ソウくんって誰だ?惣太郎だからソウくんじゃないのか?」
絢斗の呟きに、チャラチャラした態度で惣太郎が答える。
「ソウくん?あー、あのヘッポコ乙女ゲームの2次元ツンツンイケメンキャラね。鈴先生の最推しらしいけど、人気キャラランキングでは12位とか微妙な立ち位置らしいっすよ」
「ちょっと、惣太郎。いくら2次元キャラだからって人の最推しバカにするとか信じられないんだけど」
すると、惣太郎の彼女である真夜が突如怒りながら惣太郎の肩を叩き始めた。
どうやら彼女もゲーオタらしい。
別の修羅場勃発である。
「ご、ごめん。真夜たん。バカにしたつもりはないんだ。今日だって鈴先生が真夜たんとゲームの話をしたいって言ってたからここに呼んだんだよ?信じて。推しメン最高!」
「軽すぎて草!」
痴話喧嘩は置いといて、問題はこの微妙な空気だ。
「ソウくんは惣太郎くんがおっしゃる通りゲームの2次元キャラです。最推しとはいってもにわかでして。このところボーナス狙いのログインしかしてないから好感度がた落ちだと思います。しかし、今日はクリスマスイベントで特別なスチルが手に入り・・・」
鈴の言っていることは絢斗には半分以上理解できなかったが、要するにゲーム内のキャラクターで実際には存在しないらしい。
「そうか。実際に鈴に触れられないソウくんは可哀想だな。初恋の相手というのは許せないが2次元キャラなら安心だ。甘んじて受け入れよう」
「なに真顔で恥ずかしいこと言ってんすか!あんた」
鈴と思いを通じさせてからの絢斗のキャラ崩壊が激しすぎてツラい。
いや、我慢させるのも不安にさせるのも本意ではないので言いたいことは言ってもらっていいのだが、TPOを弁えてほしいというか・・・。
「あらあら、いいじゃない。鈴先生。犬猫の譲渡だけでなく、鈴先生の引き取り先が決まって安心したわ。結婚式には呼んでね?」
「け、結婚式?」
「お任せ下さい」
「・・・!」
あわてふためく鈴を尻目に、絢斗はノリノリだ。
「鈴、諦めろ。攻略したら責任もって最後まで推す。それがゲーマーの流儀だろ?」
「・・にわか、ですから」
「飼い始めた動物を途中で捨てるのか?」
「まさか」
それを言われると二の句が出ない。
周りの保護猫と保護犬の視線が突き刺さるがするのは気のせいだろうか?
「こいつらと河上家の面々が証人だ。一生俺に連れ添うこと。わかったな」
「ハイ、ワカリマシタ」
鈴は、目の前のツンツンデレなしイケメンだった絢斗を見上げた。
゛この人はないな゛
と、思った初めての出会いから、鈴はきっと絢斗に惹かれ始めていた。
この人のデレた姿が見たい。
心の奥に秘めていた切ない願望を誘い出してくれたのは、この傷心ワンコならぬ傷心狼(改め傷心猿)だった。
そして特別でもなんでもない鈴の誕生日を最高の1日に変えてくれた王子様。
この駅前の大きなクリスマスツリーの下で愛を誓うと、永遠に別れないというジンクスもある。
小鳥の卵が生んだ二人の出会い。
勘違いを、動物が繋いだ永遠の誓い。
この無表情で無口な絢斗に隠されていた熾烈な想い。
鈴が開放できたのだと思えば悪くない。
見つめ合う二人の上にジングルベルが鳴り響く。
明日が終わればお正月気分だ。
迎える新年も、この人の寂しさや悲しさを上書きできるような楽しいことで溢れますように・・・。
鈴は笑顔を浮かべたツンデレワンコと、微笑みを交わして再び動物と向き合うのだった。
fin
絢斗の呟きに、チャラチャラした態度で惣太郎が答える。
「ソウくん?あー、あのヘッポコ乙女ゲームの2次元ツンツンイケメンキャラね。鈴先生の最推しらしいけど、人気キャラランキングでは12位とか微妙な立ち位置らしいっすよ」
「ちょっと、惣太郎。いくら2次元キャラだからって人の最推しバカにするとか信じられないんだけど」
すると、惣太郎の彼女である真夜が突如怒りながら惣太郎の肩を叩き始めた。
どうやら彼女もゲーオタらしい。
別の修羅場勃発である。
「ご、ごめん。真夜たん。バカにしたつもりはないんだ。今日だって鈴先生が真夜たんとゲームの話をしたいって言ってたからここに呼んだんだよ?信じて。推しメン最高!」
「軽すぎて草!」
痴話喧嘩は置いといて、問題はこの微妙な空気だ。
「ソウくんは惣太郎くんがおっしゃる通りゲームの2次元キャラです。最推しとはいってもにわかでして。このところボーナス狙いのログインしかしてないから好感度がた落ちだと思います。しかし、今日はクリスマスイベントで特別なスチルが手に入り・・・」
鈴の言っていることは絢斗には半分以上理解できなかったが、要するにゲーム内のキャラクターで実際には存在しないらしい。
「そうか。実際に鈴に触れられないソウくんは可哀想だな。初恋の相手というのは許せないが2次元キャラなら安心だ。甘んじて受け入れよう」
「なに真顔で恥ずかしいこと言ってんすか!あんた」
鈴と思いを通じさせてからの絢斗のキャラ崩壊が激しすぎてツラい。
いや、我慢させるのも不安にさせるのも本意ではないので言いたいことは言ってもらっていいのだが、TPOを弁えてほしいというか・・・。
「あらあら、いいじゃない。鈴先生。犬猫の譲渡だけでなく、鈴先生の引き取り先が決まって安心したわ。結婚式には呼んでね?」
「け、結婚式?」
「お任せ下さい」
「・・・!」
あわてふためく鈴を尻目に、絢斗はノリノリだ。
「鈴、諦めろ。攻略したら責任もって最後まで推す。それがゲーマーの流儀だろ?」
「・・にわか、ですから」
「飼い始めた動物を途中で捨てるのか?」
「まさか」
それを言われると二の句が出ない。
周りの保護猫と保護犬の視線が突き刺さるがするのは気のせいだろうか?
「こいつらと河上家の面々が証人だ。一生俺に連れ添うこと。わかったな」
「ハイ、ワカリマシタ」
鈴は、目の前のツンツンデレなしイケメンだった絢斗を見上げた。
゛この人はないな゛
と、思った初めての出会いから、鈴はきっと絢斗に惹かれ始めていた。
この人のデレた姿が見たい。
心の奥に秘めていた切ない願望を誘い出してくれたのは、この傷心ワンコならぬ傷心狼(改め傷心猿)だった。
そして特別でもなんでもない鈴の誕生日を最高の1日に変えてくれた王子様。
この駅前の大きなクリスマスツリーの下で愛を誓うと、永遠に別れないというジンクスもある。
小鳥の卵が生んだ二人の出会い。
勘違いを、動物が繋いだ永遠の誓い。
この無表情で無口な絢斗に隠されていた熾烈な想い。
鈴が開放できたのだと思えば悪くない。
見つめ合う二人の上にジングルベルが鳴り響く。
明日が終わればお正月気分だ。
迎える新年も、この人の寂しさや悲しさを上書きできるような楽しいことで溢れますように・・・。
鈴は笑顔を浮かべたツンデレワンコと、微笑みを交わして再び動物と向き合うのだった。
fin