無口な彼の熾烈な想い
「決めました・・・」

絢斗は、鈴がうつむいて何かをぶつぶつと呟いき始めたなと思ったら、突然、瞳をキラキラと輝かせ自分の方に詰め寄ってきたのを見てぎょっとした。

「絢斗さん、私は全面的に絢斗さんの味方です。可愛いとかカッコいいからって安易に流行に飛び付いてはいけません。十分に検討してから話は進めないと。そのためには本物をリサーチするのは当然の筋です!」

何がそんなに鈴のやる気スイッチに火を付けたのかはわからないが、本気で絢斗の悩みに向き合ってくれる所存のようだ。

しかも気づいているのかいないのか、いつの間にか絢斗を名前を呼びしている。

他の女性に名前呼びされても鬱陶しいだけだが、鈴からの名前呼びは素直に嬉しい。

特別になれたような気がするから世の男達は、はじめての名前呼びに悶絶するのだろうか?

「理解してくれて嬉しいよ」

「あれ?もしかして、もう動物園に着きましたか?ここは私が奢ります。そうと決まれば、さっさとお目当ての場所にgoですよ」

昨夜からの態度で、鈴は絢斗と動物園へ行くことに難航を示していると感じていたのだが、それにしてもこの突然のハイテンションはおかしい。

千紘に聞いていた通り、鈴は本当にあ・い・つのことが大好きなようだ。

それはそれで何だか面白くはないのだが、鈴が心底楽しそうにしている様子を見るのは面映ゆい。

料理を作っているとき以外は、楽しいなどと感じることもなかった絢斗だが、澄んだ冬空の下へ嬉しそうに飛び出していく鈴を見て目を細めた。
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