無口な彼の熾烈な想い
「鈴がかなえちゃんのごり押しであの乙女ゲームを始めた時から、もしかしたら絢斗くんなら鈴の好みのドンピシャかもなと思ったけど正解だったね」

「あの推しメン、本当に瀬口さんに似てるわよね?私もあのゲーム、少しプレイしてみたけど、見かけだけではなくて性格も似てる感じだったわ。職業はシェフではなくて警察官だったけど」

治療室に消えた鈴を見送って、千紘と玖美は満足げに笑った。

「どんなに男達から好き好き光線を送られても反応しなかった鈴だから、もしかしたらダメンズ好きかもと懸念してたけど、やっぱり例に漏れずイケメン好きだったか」

「なに言ってるの。イケメンというだけならこれまでだってたくさん鈴ちゃんに言い寄ってきたわよ。それでも鈴ちゃんは決して振り向かなかった。つまり鈴ちゃんはワンコキャラ彼氏が好きだったのよ」

千紘の言う゛鈴のイケメン好き疑惑゛をそう得意気に全面否定するのは玖美だ。

「ワンコキャラ?」

「ほら、猫は気まぐれ、虎とかライオンなら俺様でしょ?ワンコ彼氏は従順彼氏なの」

「犬なら従順って訳じゃないぞ?それなら土佐犬はどうなるって話で・・・」

「今は犬種がどうこう言ってないの!あくまでもイメージよ、イメージ!」

イメージといっても、ワンコ彼氏のイメージが大雑把過ぎはしないか?

動物だって個体差はあるし、性格もそれぞれ違う。

そんなこと獣医の玖美ならわかりそうなものなのに・・・と千紘は思ったが突っ込むのはやめた。

鈴の妄想は自己完結型なのに対し、玖美の天然は周囲を巻き込む迷惑型なのだ。
< 71 / 134 >

この作品をシェア

pagetop