無口な彼の熾烈な想い
「関口(綾香)さんから、今朝、フクロウカフェ構想は断念すると連絡があったよ。まあ、そもそも鈴と瀬口さんに接点を持たせるための策だったんだから挫折しても問題はないらしいんだけど」
千紘の呟きに、玖美も大きく肯首する。
「ペットカフェ構想は以前から計画にあったらしいけど、この不景気だしね、どうしてもというわけではなかったらしいの。でも、恋に不器用な絢斗さんのために優しい姉が策を練って・・・ああ、素敵。私達兄(義)姉も鈴ちゃんのために頑張らないとね」
うっとり+やる気に満ちた玖美を止める者は誰もいない。
・・・まあ、こちら(玖美)は放っておいて良いとしても、絢斗の姉の綾香もかなりの強者認定して間違いない。
自分は鈴をからかって楽しんでいるような鬼畜のくせに、千紘は鈴が誰かに傷つけられることは良しとしない。
綾香が行き過ぎた行動をして鈴や絢斗を傷つけるのなら容赦はしないつもりだ。
結婚5年目の千紘達が子供を作らないのは、鈴のことが心配なのことも理由であった。
表面ばかりを取り繕って、考えなしの言葉や態度で傷つけ、その事にすら気付かない両親。
間違いなく、平野の両親は毒親だった。
千紘が子育てに忙しくなれば、千紘に構ってもらえない両親のターゲットは鈴のみになる。
若い頃はそれぞれ若い愛人にうつつをぬかしていれば良かっただろう。
だが、貯金もろくにせず自慢の美貌も失われてきた両親は、次第に愛人にも相手にされなくなり、老後を心配し不安になってきたからかやたらと千紘や鈴に状況伺いをしてくるのだ。
今は、父方の祖父である一郎の目があるからまだいい。
だが、一郎がいなくなったら?
誰が独り身の鈴を守るのか・・・?
もちろん千紘も生涯鈴を守るつもりでいる。
しかし、千紘には他にも守るべき妻や今後生まれてくるであろう子供達もでき、そのうち十分に手が回らない可能性がある。
鈴は毒親の一番の被害者だ。
『女が偉そうにするな!』
『お前なんかに子供を産ませるんじゃなかった』
『男だからって何様よ?好き放題やるだけやってその言動?だったら施設にでも捨ててくればいいじゃない』
男の千紘と違って、互いの性を蔑む両親から受ける間接的な暴言の数々に、鈴が男性への理想や結婚へ憧れを失っていったのは致し方ないと言えた。
幸い比較的幼い段階で、二人の祖父に助け出された兄弟が自尊心まで失うことはなかったが、恋愛や結婚に一切の夢も希望も抱こうとしなくなった鈴に、千紘は悲しみを覚えていた。
成長した鈴は、千紘や一郎にすらほとんど甘えようとしない。
かなえという親友はいるようだが、完全に心を開ききっているとまでは断言しがたい。
そんな鈴を癒せる存在は現れるのだろうか?
お節介と言われ続けても、千紘はずっと鈴を救い上げてくれる運命の相手を探していた。
最近は、友人や知人の伝を頼ったりもしていたがそう簡単に大切な妹を託せるような男は見つからなかった。
そんな男がいたならば、相手がいようとなんだろうと、絶対にこちら側に引き込んで鈴にあてがうつもりでいたのだが、運命の女神は、そんなヒーローを自分から送りこんできた。
何気にこの世も捨てたもんじゃない。
鈴を振り向かせることのできるヒーローは、単なるイケメンで知名度がある、というだけではなかった。
鈴と同じように心に癒えない傷を持った無口で不器用な男。
鈴は決して認めないだろうが、鈴が唯一推しメンだと認めた乙女ゲームのヒーローにそっくりな容姿と性格からみるに、絢斗は鈴の好みのドンピシャに違いなかった。
そんな゛貴重種゛千紘や玖美が見逃すはずはない。
これを運命と言わずしてなんと言うのか。
千紘は顎に手をあててニヤリと笑った。
千紘の呟きに、玖美も大きく肯首する。
「ペットカフェ構想は以前から計画にあったらしいけど、この不景気だしね、どうしてもというわけではなかったらしいの。でも、恋に不器用な絢斗さんのために優しい姉が策を練って・・・ああ、素敵。私達兄(義)姉も鈴ちゃんのために頑張らないとね」
うっとり+やる気に満ちた玖美を止める者は誰もいない。
・・・まあ、こちら(玖美)は放っておいて良いとしても、絢斗の姉の綾香もかなりの強者認定して間違いない。
自分は鈴をからかって楽しんでいるような鬼畜のくせに、千紘は鈴が誰かに傷つけられることは良しとしない。
綾香が行き過ぎた行動をして鈴や絢斗を傷つけるのなら容赦はしないつもりだ。
結婚5年目の千紘達が子供を作らないのは、鈴のことが心配なのことも理由であった。
表面ばかりを取り繕って、考えなしの言葉や態度で傷つけ、その事にすら気付かない両親。
間違いなく、平野の両親は毒親だった。
千紘が子育てに忙しくなれば、千紘に構ってもらえない両親のターゲットは鈴のみになる。
若い頃はそれぞれ若い愛人にうつつをぬかしていれば良かっただろう。
だが、貯金もろくにせず自慢の美貌も失われてきた両親は、次第に愛人にも相手にされなくなり、老後を心配し不安になってきたからかやたらと千紘や鈴に状況伺いをしてくるのだ。
今は、父方の祖父である一郎の目があるからまだいい。
だが、一郎がいなくなったら?
誰が独り身の鈴を守るのか・・・?
もちろん千紘も生涯鈴を守るつもりでいる。
しかし、千紘には他にも守るべき妻や今後生まれてくるであろう子供達もでき、そのうち十分に手が回らない可能性がある。
鈴は毒親の一番の被害者だ。
『女が偉そうにするな!』
『お前なんかに子供を産ませるんじゃなかった』
『男だからって何様よ?好き放題やるだけやってその言動?だったら施設にでも捨ててくればいいじゃない』
男の千紘と違って、互いの性を蔑む両親から受ける間接的な暴言の数々に、鈴が男性への理想や結婚へ憧れを失っていったのは致し方ないと言えた。
幸い比較的幼い段階で、二人の祖父に助け出された兄弟が自尊心まで失うことはなかったが、恋愛や結婚に一切の夢も希望も抱こうとしなくなった鈴に、千紘は悲しみを覚えていた。
成長した鈴は、千紘や一郎にすらほとんど甘えようとしない。
かなえという親友はいるようだが、完全に心を開ききっているとまでは断言しがたい。
そんな鈴を癒せる存在は現れるのだろうか?
お節介と言われ続けても、千紘はずっと鈴を救い上げてくれる運命の相手を探していた。
最近は、友人や知人の伝を頼ったりもしていたがそう簡単に大切な妹を託せるような男は見つからなかった。
そんな男がいたならば、相手がいようとなんだろうと、絶対にこちら側に引き込んで鈴にあてがうつもりでいたのだが、運命の女神は、そんなヒーローを自分から送りこんできた。
何気にこの世も捨てたもんじゃない。
鈴を振り向かせることのできるヒーローは、単なるイケメンで知名度がある、というだけではなかった。
鈴と同じように心に癒えない傷を持った無口で不器用な男。
鈴は決して認めないだろうが、鈴が唯一推しメンだと認めた乙女ゲームのヒーローにそっくりな容姿と性格からみるに、絢斗は鈴の好みのドンピシャに違いなかった。
そんな゛貴重種゛千紘や玖美が見逃すはずはない。
これを運命と言わずしてなんと言うのか。
千紘は顎に手をあててニヤリと笑った。